クリシュナは、全てのものを魅了するヴィシュヌ神の化身として知られています。化身とは、自らの意思で精神世界から物質世界へと降りてきたもののことです。ヴィシュヌ神は、世界が必要としている時にバランスをもたらしてくれる生命の維持神・保護神です。彼は1000以上の名前を持っていて、私たちに神を思い出すこと、神と繋がることを思い出させてくれます。私たちが繋がるとき、起こる出来事を関連させている、もしくはシュリ・ブラフマナンダ・サラスワティ氏が言う「何事にも囚われない状態」にあります。これこそがヨガです。
Namo(namas)/ ナモ(ナマス)=礼、敬礼
Bhagavate /バガヴァーテ= 神へ
Vasudevaya/ ヴァスデーヴァーヤ= クリシュナの別名
ヴァスデーヴァとは、クリシュナの父のことで、バガヴァットギータでは、アルジュナはクリシュナのことを何度もヴァスデーヴァと呼びます。
Vasu/ ヴァース= 生命
Deva/ デーヴァ= 神、光
なので、ヴァースデーヴァとは、全ての生命に存在する超越した神のことを指します。クリシュナは感性、知性を持ってマントラを唱えれば、神は応えてくれると説明します。このマントラはmukti mantra/ ムクティマントラ=悟りのマントラとしても知られ、他全てのマントラのように精神の自由のための魔法の語句です。クリシュナは、神のもとへ帰るためくの素晴らしい方法を知っていて、「忘れないということの美学」を私たちにしきりに思い出させようとします。この世に生まれたとき、私たちは神を覚えていますが、残念なことに私たちは何であるか、どこから来たのかもそのうち忘れてしまいます。
古代の教えによると、私たちがこの身体に転生した時、3つの恩恵を与えられるそうです。1つ目は「神を思い出すこと」、2つ目は「私という存在を超え神の望みを受け入れること」、3つ目は「神のもとに帰る方法を見つけること」。
“Make me an instrument for thy will,not mine but thine be done”
「私のものとしてではなく、あなたの意思でこの私を道具として使ってください」
このマントラは、これらの恩恵を思い出すための言葉です。
Bhagavan/ バガヴァンという言葉は英語ではLord=主と似たような意味で用いられます。
Bhagavanと呼ばれる者はBhaga/ バガという6つの性質を持つと言われます。
1つ目はWealth/富です。神性な感覚の中で与えられる果てしない能力です。イエス・キリストやブッダが良い例でしょう。
2つ目はPower/力です。これは愛するため、奉仕するため、助けるための力であって、はかなくて限りのある身体による力ではありません。
3つ目はDharma/ 真理です。不親切で貪欲な自分勝手な行動は、自己の気付きを得る妨げになります。
4つ目はEsteem/ 敬意です。思いやりと寛大な姿勢を持って、他者がもたらしてくれたものに敬意を捧げることです。バガヴァットギータの中でクリシュナは、正当な理由を明らかにしたとしても、争う両者から尊敬されました。
5つ目の性質はBeauty/美です。親切であること、善を尽くすことで、時間の経過と共に育つ内側の美しさを指します。
最後の6つ目はJnana/知識です。知性というよりも、学んだ見識を活かした在り方・生き方のことです。
これら6つの性質はバガヴァンだけが持つように思われますが、私たち自らが自己の気付きを発展させるために、自身の欲を満たす前に他者に施すために、他者の中に神を見るためにそれら6つを練習することは可能です。
バガヴァットギータの中でクリシュナは3つのヨーガの道を説明します。それはカルマヨーガ(行為のヨーガ)、ジュニャーナヨーガ(知識のヨーガ)、そしてバクティヨーガ(献身のヨーガ)です。
私たちはこの3つの道を、異なる階に止まるエレベーターのようなものにイメージすることができます。ある者は一階に行くし、またある者はいつくかの階を行き来し、またある者はすぐに最上階まで行くかもしれません。バクティヨーガは、すぐに最上階まで登るタイプです。バクティとは献身で全ての階・道のことであり、クリシュナはこれこそがヨーガの究極・完全であると言います。6章の47番でも、彼はバクティヨギーを最も優れた者として説明しています。
バクティヨガの実践を通して、神の名を唱えることで、私たちは自らのエゴを手放し始めます。神の存在に気付き、彼の存在こそが私たちの人生であることを知ります。この過程は、神と私たちの関係をより深めていきます。バクティ(献身)とは愛であり、愛とは人生において最もパワフルな性質です。それは空想や想像の中だけのものでは決してなく、真実そのものです。
私たちは両親やパートナー、子供、犬に対する愛を想像できるし、彼らの中に神の存在を見ることができます。Sadhana/ サダナ=意識的なスピリチュアルな実践を発展させるために、愛する人の名前を自分と結びつけて、実用的な方法で呼ぶことも含まれます。瞑想の実践での恩恵も含め、6つのバガを見ながら感謝の気持ちを持って毎日をスタートしてください。創始者のシャロン先生は仰います。
「私たちが他者をどのように扱うかが、他者が私たちをどのように扱うかを決定づける。他者の私たちへの扱いかたは、私たちが自分自身をどのように見ているかによって決定され、自分自身をどのように見るかは、自分はどのような人間になっていくかを決定づける。」
私たちが神の存在を思い出す時、愛の力は私たちの生き方を向上させ、神のもとに帰る方法をより早く諭してくれるのです。